人生はお試しの繰り返し

果てしない此の世に宙ぶらりん

私は星野源に嫉妬してしまう

 

    街を歩けば、CDショップに入れば、音楽番組を見れば、ただ何となくCMを見ていたら、YouTubeで音楽を聞いていたら、TLを眺めていれば、彼の名前はどこでも見つかる。時代の寵児ともなろう星野源

私は彼を素直に好きになれない。

    今からする話は私の自分勝手な思いをぶちまけているに過ぎない。でもだからこそモヤモヤした気持ちを文字にしたらスッキリするんじゃないかと思う。どうか許して欲しい。誰かを不快にしたくて書く文章ではないのだ。

    星野源は本当にいい音楽を作ると思う。私は彼のファンではないので全ての楽曲を把握している訳では無いが、聞いた誰もが彼だと分かるような、それでいてとてもオシャレな曲の展開をもう自分の中でパターン化することが出来ている。さらにベースが出来ているところにどんどん色を付け足してた上で、一般大衆が求める星野源の音楽を形に出来る凄い人だと思う。申し訳ないが、前提として私自身は音楽の専門的知識に本当に疎い。楽器をやってみたものの楽譜が読めなくて挫折をしてしまったし、それでも毎週関ジャムを見ては音楽の基礎を紐解くという行為にはワクワクする、理解力の悪い音楽好きだ。だから星野源の音楽に対して言えることは「時よ」という曲が進化したら「恋」になったのかなとか、「恋」のアウトロって一聴したら物凄くコアなインスト好きな人が聞きそうなのに、サビのキャッチーさと星野源というブランドでポップスとして成り立つ上に普段の生活に馴染んだ流行歌の中にこういう部分を刷り込ませるのは凄いなあぐらいである。

   今までの流れで分かる通り、私は星野源の音楽がかなり興味深く、好意的に聞いているのが分かると思う。それでも素直になれない理由はたった一つ。彼のバックバンドの常連、長岡亮介の存在である。

   長岡亮介について多くを知っている人はこのブログを読む人の中で何人いるだろうか。ドラえもん型のギターを引く人。Family Songで女装してる人。ギターの音が凄い独特で、楽曲の中でも一際目立つ人。音楽番組でもやけにニコニコしていて、何なら次の出演者にもちょっかいを出している人。やたらとスタイルが良くて、見るからにモテそうな人。そう言ったら何となくピンとくるだろうか。それとも東京事変浮雲であると言えば1番分かってもらえるだろうか。

    東京事変椎名林檎がボーカルを務めたバンドである。2003年に林檎さんのバックバンドとして結成、2004年に「群青日和」でデビュー、その後メンバーチェンジを経てアルバムを5枚リリース、そして2012年突然解散を発表し2月29日、4年に1度の閏日に解散した。

    もうここまで詳しく書いていればお分かり頂けると思うが、私は東京事変の大ファンだ。今でも変わらない。高校1年生でたまたま見た「サービス」のPVをきっかけにして大好きになり、毎日東京事変のことばかり考えていた。割と厳しめな家庭に育った私は大学生になったら事変のライブに行くことを夢見ていたし、彼らのアーティストとしての技量があるからこそ大人が真面目にふざけている雰囲気が大好きで憧れていた。心の底から東京事変が大好きだった。だからこそ高校3年生の、センター試験4日前に発表された『解散』の2文字が未だにトラウマなのである。

   私が星野源を素直に好きだと言えないのは、ただただ彼のバックバンドの中にいる長岡亮介が、浮雲が、うっきーが、すごくすごく幸せそうだからである。あの時私が映像でしか見ることの出来なかった、心から音楽を楽しむうっきーを星野源のファンの人は、バックバンドの人達は、星野源は、あんなに間近で見ることが出来る。事変が解散してから、私は大学で新しく好きな音楽に出会ってライブを好きなように行くことが出来た。社会人になってお金を自分で稼ぐことが出来るようになった。多分それなりに頑張って今まで生きてきたのに、私は東京事変のライブに行くことは絶対に出来ない。ずっと叶えられない夢なのである。東京事変はうっきー1人のバンドではない。うっきーは林檎さんのツアーにギターで参加することだってある。でも何故か東京事変を知らない人達と幸せそうにしているうっきーを見ると悲しくなってしまうのである。

   再三言うが、これは東京事変を忘れられないまま大人になってしまった、ただの社会人の馬鹿らしいくて女々しい話なのである。星野源もファンの人もバックバンドの人も、誰よりもうっきーには幸せでいて欲しいし東京事変に関わるすべての人が納得して生きてくれたら幸せだ。でも誰にでもそういう忘れられない、何よりも輝いていたからこそ忘れられない夢とかってもしかしたらあるんじゃないだろうか。

   きっと、いつか素直に東京事変に向き合うことが出来たら、私は真っ直ぐにうっきーの笑顔を幸せに思うことが出来るだろうか。その時は大音量で星野源の曲を聴いて、うっきーのギターの音色に素直にニヤニヤしたい。林檎さんが「ほわっほわしてるから」と名付けた浮雲という名に相応しく、音楽番組で浮かれているうっきーを見て心から笑いたい。